去る10月19日、豊洲駅前にオープンした豊洲シビックセンターホールにおいて、スポーツ・バイ・アート・イニシアチブ主催による、元プロ陸上選手でTOYOSU会議チェアマンの為末大さんの講演会が開かれた。
タイトルは「障害者スポーツの未来」。為末さんはこの講演で、一部の人だけではない、社会全体にとっての障害者スポーツの意味を聴衆に訴えた。
「こんにちは。為末大です。今日は「障害者スポーツの未来」というタイトルでお話をします。僕は2020年に向けては、この障害者スポーツを支援しようと思って色々と活動をしています。まずはこのビデオを見てください。
(義足の走り幅跳び選手の映像)
これは、マルクス・レームというドイツの義足走り幅跳び選手が、8メートル24という世界記録を作った映像です。この記録はロンドンパラリンピックであれば当然金メダルなのですが、実はオリンピックでも銀メダルに相当するすごい記録です。この走り幅跳びという競技においては、近い未来に障害者の記録が健常者を抜くのではないかと言われています。
僕は2012年に現役を引退しましたが、2009年からそれまではアメリカのサンディエゴに移住して、トレーニングをしていました。練習はオリンピアン半分、パラリンピアン半分という環境で、そこで一人のアフリカ系アメリカ人の義足アスリートと仲良くなり、一緒に練習をするようになったのが、僕が障害者スポーツに興味を持つようになったきっかけです。」
──その選手は両足が義足で、為末さんの走りはその選手より当然速かったという。
しかしある時、彼が義足を使う「コツ」をつかんだ瞬間があり、それから彼の走りはスタートこそ為末さんに出遅れるものの、途中から一気にスピードが上がり、為末さんに追いつくようになったという。為末さんはこの実体験から、パラリンピックとオリンピックの記録は将来逆転するかもしれないと感じ、障害者スポーツを強く意識するようになったのだという。
「僕は現役の時、世の中を「ワオ」と言わせることが、競技を続けるモチベーションでした。その夢は今一歩かないませんでしたが、もし障害者アスリートが健常者アスリートに勝ったら、世界中が「ワオ」と言うのではないか。そんな思いもあって、その体験をきっかけに少しずつ、障害者スポーツの世界に関わりたいという気持ちが膨らんでいきました。」