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ニュース 2015.12.18

為末大さんが豊洲シビックセンターで講演 「障害者スポーツの未来」と新豊洲(講演会抄録Vol.5)

Vol. 5 義足の進歩と選手の能力の関係

──こうしたXiborgの活動を通じて、たとえば義足で走るにも、やはり左右均等のバランスが取れた走りがいいということが、徐々にわかってきたという。そうするとトレーニングでも、左右を同じように動かして走るのがより良い走り方ということになってくる。こうしたトレーニングの知見は、通常のリハビリテーションにも活かせる可能性がある、と為末さんは語る。

「イメージしてもらうといいのは、F1の世界で、F1カーなんて普通の人は買えませんけど、F1の世界で徹底的に突き詰められた技術が一般の乗用車に応用されるわけですね。そんな関係が、パラリンピックにともなう競技用義足の進歩と、障害者が使う器具の関係になっていくのではないかと思っています。
ただこういう話をすると、障害者スポーツの進化というのはテクノロジーの進化なんじゃないの、という声が聞こえてくるんですが、それは全くそうではなくて、選手の能力というのがやはり重要なんです。私たちの理想の義足ができた時には、それを扱える選手は世界に数人しかいないかもしれない。」

──為末さんはその例として、棒高跳びのセルゲイ・ブブカ選手が競技で使っていた棒が、通常ではありえないほど硬いものであったことを挙げた。その硬さを曲げて高く跳ぶためには、鍛え上げた大きな体と、その硬い棒を持ちながら100メートルを10秒台前半のスピードで走る能力が必要だったという。

「またこうしたテクノロジーの進歩が不可欠ということになると、結局先進国の選手しかパラリンピックでは勝てないのでは、という疑問も出てきますが、パラリンピックで使われる義足は市販品でなければならないというルールがあります。だから世界中の誰もが買うことができるということになるので、その心配はありません。ただやはり値段は高いんですね。50万円とかするので、なかなか手が出ない。それでもっと安い導入編とでもいう、2、3万円で買えるものも作れないかと考えています。そうすれば、競技に興味を持った子どもたちがそれを使って走る体験ができたり、もっとたくさんの障害者の人達が、競技に参加できるようになります。
さらにその先には、発展途上国にたくさんいる義足が必要な人たちが買えるような、安価で十分な機能を持つ義足ということも考えています。それには値段は2000円位に抑える必要があると思っています。これについては、まだ僕たちは何もできていない状態ですが、もしこれを作ることができれば、本当にたくさんの人々が歩くことができるわけです。ぜひこれは将来的に進めたいと思っています。」

「Vol. 6 障害者スポーツが提示する価値観」につづく

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