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ニュース 2015.12.21

為末大さんが豊洲シビックセンターで講演 「障害者スポーツの未来」と新豊洲(講演会抄録Vol.6)

Vol. 6 障害者スポーツが提示する価値観

──そして障害者スポーツが社会に示す価値として、限界の突破と共感というキーワードが話の終わりに挙げられた。例として1950年代に、1マイルレースで不可能と言われた4分の壁を初めて切ったロジャー・バニスター選手という人の話が語られた。

「ロジャー・バニスターという名前は、あまり聞いたことがないかもしれませんが、それまで30年以上破られていなかった1マイル走の記録を、それも人類には不可能といわれた4分の壁を切って破った人です。実はこの記録はほんの数ヶ月で他の選手にまた破られてしまいます。それどころか、バニスター選手の後、1年間になんと23人の選手が4分を切る記録を出したのです。
なぜこんなことが起きたかというと、僕が思うには、人間はかなりの部分、自分の頭の中の常識や思い込みによって、自分の限界を決めているのではないか、ということです。わかり易い例では、野茂選手がメジャーリーグで活躍した後、たくさんの日本選手がメジャーリーグに挑戦するようになりましたよね。バニスター選手が記録を破ったことで、そしてそれが世界中で報道されたことによって、自分にもできるかもしれないと思った選手がたくさんいたんだと思うんです。それで次々と記録を破る選手が出てきた。このように限界は突破できるということを見せられるのが、スポーツが世界にもたらす大きな価値の一つではないでしょうか。僕が「ワオ」という瞬間にこだわるのも、これなんです。」

──さらにスポーツが提供できる大きな価値が、「共感」だと為末さんはいう。

「私たちがスポーツを見るときに、この共感というのがものすごく大きなキーワードなのではないか、と思っています。スポーツの映像を見た時に、それが自分の人生のどこかにつながって、そこに大きな感動や強い思いが生まれる。それで障害者スポーツがこの点でも大事だなと思うのは、パラリンピアンは全員、障害という非常に大きな困難を乗り越えた上で、トップアスリートとなった人たちだということです。
極端なことを言うと、オリンピアンは恵まれた条件が揃えばなれますが、パラリンピアンはそうではないんですね。人生の何処かで障害を乗り越えたという経験を持っているわけです。これをロンドンパラリンピックの時にはすごく大きくフォーカスして、Super Humanというコンセプトで、パラリンピアンたちの障害を負った理由や部分を隠さずにもろに見せるというマーケティングを行いました。かなり反対もあったそうですが,世界中から大きな評価を受けました。
パラリンピアンのような高みに到達した障害者アスリートたちを、英語ではChallenged(チャレンジド)とも呼びますが、彼らのパフォーマンスを見ると、人は自分の人生の中での苦しみや、それを乗り越えた経験などと重ね合わせて強く共感するのではないでしょうか。彼らが活躍することで、社会が与えられるインパクトは非常に大きいと思います。」

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