TOYOSU会議

各界の若手有識者が新豊洲のまちづくりを自由に語り合う

2020年、パラリンピックと豊洲のまちづくりを考える
第1回TOYOSU会議
Part5

アートとスポーツから生まれる新しい産業

為末:
ロンドンのコンセプトは確か「レガシー」だったと思いますが、僕が日本のオリンピック・パラリンピックの議論の中でひとつ気に入らないなと思っているのが、2020年以降の話がほとんど出てこないということなんです。2020年までにどうするかという話に終始してしまうのですが、モントリオールのオリンピックは失敗したと言われてますけれど、30年間オリンピックの負債に悩まされて、東京がもしそんなことになったら、とても耐えきれないんではないかと心配になります。だからこそ2020年以降東京はどんな環境になるんだろうということを考えていく必要があると思うんですが、高齢化というような観点から見ると、世界である意味最も未来に近いのが日本ではないかと思うんです。そういった意味で、2020年オリンピック後の東京、豊洲の町づくりというのはどうあったらいいんでしょうか。
清水:
おっしゃる通り、オリンピック・パラリンピックのあとのことが本当に大事だと思っています。投資が行われて、それがちゃんと継続する形でどう続いていくかが、ものすごく大きなテーマの一つ。そのときに僕個人としてはパラリンピックにものすごく期待しています。これから先の社会を考えたときに、もしかするとパラリンピックは未来の産業を作るんじゃないかという期待を持っています。SPORT X ARTという話を今日はしているのですが、アートセンターを運営している立場から、クリエイティブなことは産業につながる可能性が高いということです。従来アートはいわば消費の極みみたいな感じで、金持ちのためみたいなところがあったと思いますが、そうではなくて、アートはこれからの日本にとって飯の種になる可能性があるなと思い始めていて、またスポーツも同じです。特にスポーツにおいても先ほど来の話のように、これからの高齢化していく日本社会において、新しいジャンルの産業を生むもとになるんではないかと思います。そういう観点からパラリンピックに大きな期待を持っています。
為末:
世界中が高齢化していくわけですが、その中でこのパラリンピックが生み出すものが、大きな産業となる可能性がある。となると我々のサイボーグもひょっとするとニューヨーク辺りにIPOしちゃうかもしれない(笑)。実際に福祉用具のような領域が、パラリンピックをきっかけにすごくなっていくみたいなことが可能性としてあるんでしょうか? 例えばサイバスロンみたいなこともあるんで、そのあたりを遠藤さん。
遠藤:
最初にそのサイバスロンを説明しますが、これはスイスで2016年から始まるサイボーグの競技会とも言うべきものです。これはパラリンピックと違って、ロボット技術など何を使ってもいいのですが、障害者と呼ばれている人たちがパイロットとして技術を身につけて競技をするものです。パラリンピックよりも、もう少し科学技術よりというか、人間の身体能力と科学技術の組み合わせとしての競技会なんです。
それは何を目的にしているかというと、やはり未来の生活で、我々人類は、身体に不自由が出てきたときに、まだ根本的なソリューションというものを持っていないんですね。これからの日本は、先ほどから耳にたこができるくらい繰り返しでてくる高齢化社会というものもあって、2020年以降にどうなったらいいなと思うかというと、元気なおじいちゃん、おばあちゃんが増えるといいなと思うんです。よぼよぼで腰が曲がってるんではなく、自分の足でしっかり歩いて、ジョギングしているようなお年寄りが増えるといいなと。そのための技術開発と意識改革、若い頃から体を動かすためのインセンティブであったりとか、あるいは歩けなくなったひとも歩けるようになるような技術開発というようなものが、2020年以降そういったものが活用される。また中国なんかは、今後日本以上に少子高齢化が進む訳で、それに対するソリューションを日本がお裾分けできるような、日本人の人口が減っていく中でのGDPであるとかをかんがえると、そうしたソリューション技術の輸出みたいなものが日本に求められていくんではないかと思います。
為末:
一番先頭を切っているのが日本だ、みたいなイメージですね。ところでサイバスロンの中の競技で一番近未来的なものを一つ紹介してもらえませんか?
遠藤:
やっぱりブレイン・マシーン・インタフェイスを使ったやつですかね。ブレイン・マシーン・インタフェイスというのは脳の信号を抽出して何かに役立てるという装置です。まだ競技としてはそんなに確立していないんですが、頭に電極を張って、その電極で信号を読み取って画面上に映す何かを動かすといったような競技で、これって考えただけで何かが動かせるという今までになかったインタフェイスです。信号を抽出すること自体は簡単で、でもその抽出した信号をどのように活用するかというところがまだまだできていない。これができると今までできなかったことがいろいろと解決するんではないかと思って、わくわくしています。
為末:
座ったまま頭で念じて、標的に弾を当てる射撃みたいな競技ができてくるかもしれないってことですね。次は高桑さんに聞きたいんですけど、やっぱり2020年に向けてパラリンピックにヒーローが出てくることが結構大事だと思うんですね。それによって認識がずいぶん変わってくる。
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