TOYOSU会議

各界の若手有識者が新豊洲のまちづくりを自由に語り合う

まちづくりとスポーつのいい関係 為末 大

多様なライフスタイルを受け入れる町

これまでのまちづくりには、人が自由に表現したり、体を動かしたくなるような観点が少し弱かったんじゃないかなと思っているんですね。合理的に、効率良く住むという観点では、東京という町、日本という国はそれなりにはいいつくりなのかもしれません。でもその中でもう少し人が表現をしたくなったり、想定されている動きと違う動きをしたくなる仕組みがあるといいんじゃないかと思うんです。簡単に言うと、40代の男性が朝8時に家を出て都心部に出勤して夜に郊外の自宅へ帰ってくる、というのではない動きをする40代の男性の生活が想定されていないじゃないかということです。グローバル化して外国との仕事が多くなると、インドと取引しているWEBデザイナーはインド時間で生活するようになってくる。こういうことがこれからの町では想定されるべきなんじゃないかなと。そして空いている時間には健康のために、時間がばらばらでもいろんなスポーツができたり、生活しているだけで体を動かしたくなったりする町になるといいと思うんです。

「勝つためのスポーツ」から
「表現するスポーツ」へ

そもそもなのですが、僕は日本における「スポーツ」と言うものの定義が少し偏りがあるのかなという印象を持っています。1つには、スポーツは教育であるという側面が日本はかなりに強いこと。実際、スポーツは文部科学省の下に付いていますよね。また、オリンピックなどの勝つためのスポーツだけに関心が向いているようにも感じています。それだけではなくて、健康のためのスポーツとか、楽しむためのスポーツとかがもっとあっていいんじゃないかと思うんです。
今回、豊洲埠頭で「SPORT x ART」というコンセプトでまちづくりへ関われるということで、今までのスポーツ観から、いろんな世代や属性の人が、いろんな目的のために楽しめるようになれるといいなと考えています。そう考えた時に見えてくる1つの領域が「勝敗じゃないスポーツ」だと思うんです。それはアートの世界と結構似ていると感じていて、言ってみれば僕らが若い頃にやってきた勝つためのスポーツではなく、何か表現するスポーツということ。そういった意味で、アートとスポーツは親和性が高いのではないかと思っています。

スポーツを通して見えてくる都市の合理性

東京って短期的な経済性という面では合理的なのだと思うのですが、長期的な観点で考えるとそうでもないような気がしているんです。家を出て会社まで行くシステムが合理的にできていても、ストレスが原因でうつ病の人が大量に出てきたり、運動しなかったことによって医療費がボーンと跳ね上がったりすることを想定していないと思うんです。だから、短期的だったり、ある側面から見ると合理的なんだけども、じゃあそれを100年くらい続けても合理的なシステムと言えるのかと。僕は個々人の健康でいることとか、幸福でいるっていうこと――まあ何が幸福かってことは1つありますが――に対する観点がもう少しあってもいい気がするんです。健康で長く生きて、うまく働ける方が合理的とも言えますよね。
このことを1つ数字で出すとしたら、医療費があると思います。これは全ての先進国の先50年の課題になるはずですが、これから寿命はまだまだ延びて医療費もどんどんかかっていく。反対の言い方をすれば、お金さえかければ結構生き延びられるような技術がこれから出てくる。そういう格差の埋め方を考えることも必要ですが、一方で、国の医療費で負担できない領域の健康を保つには病気にならないっていうことだと思うんです。そのためにも運動が重要になってくるじゃないでしょうか。

2120年から今を考える

前回の1964年の東京オリンピックでつくったのが首都高、東海道新幹線、代々木公園、国立競技場など、だいたい今も使われている主たるハードなインフラはその時にできているんですね。そのロジックをちょっと乱暴にそのまま当てはめると、2020年につくるものは短くても2070年までは使われているのではないかと思うんです。それは協会のシステムや都市計画も含めて。2070年の日本は、人口は8000万人くらいで高齢者が40%以上になっている。この場所にどんなシステムだったら適用するんだろうかと言う観点がないと、そもそも今の都市計画自体が始まらないんじゃないかというのが僕の意見です。もちろん、移民政策をとって人口バランスが変わるかもしれませんが、そういった不確定要素を含めて2070年を想定せずに2020年のシステムをつくれないんじゃないかと思うんです。何となくですが、この豊洲埠頭も、2070年、2120年と続く街だと思うので、100年後どうなってるのというところからスタートしていく必要があるのかなと。まず豊洲埠頭100年構想があって、そのためにいま何するか考えられるといいと思います。

豊洲埠頭に描く未来

場所って土地の歴史を引きずっちゃうところがあると思うんです。内陸からお台場まではいろいろ土地のイメージがあるんですが、豊洲埠頭ってまだあまりイメージがなくて、それが逆にみんなでつくっていくことができるってことが魅力なのではないでしょうか。僕個人としては、できれば、ぎゅうぎゅうに詰まっている町ではなく、余白があって、その余白を使いこなすクリエイテビティがある町になってほしいと思います。東京って意外と、海外のクリエイティブな人や才能を持った人たちが集まって住む町ってない気がするんですね。ここがそれに手を挙げるっていうのもいいんじゃないかと。 ちなみに、彼らが住む場所を選ぶ時に、大切にすることの1つは緑が多いことらしいんですね。ニューヨークでも2007年から公園をたくさんつくりはじめて、全ての市民が10分で公園に行けるようにしましたが、これが結構効いたみたいで。それと、余白があることと刺激があること、この3つのバランスが大切だと聞きました。あと東京は食べ物に関してかなり期待があるようで(笑)。美味しいご飯が食べられることも欠かせない要素だと思います。最後に、もし僕がこの町に大きなコンセプトを1つつくるとしたら、「本当の意味で多様性がある、未来的な町」がいいかなと考えています。スポーツにしても同じで、新しいことが行われていたり、そのための場所がある町になってくれたらいいなと思いますね。


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  • 為末 大

    為末大(ためすえだい)

    元陸上選手

    1993年、全日本中学校選手権100m・200mで二冠、ジュニアオリンピックでは当時の日本記録を更新。以降、インターハイ、国体、世界ジュニア選手権などで短距離の新記録をマーク。法政大学へ進み、日本学生選手権400mハードル3連覇。シドニー、アテネ、北京五輪に出場世界選手権では2001年エドモントン大会にて3位に入り、トラック競技で日本人初のメダル(自己ベスト47秒89を記録)、2005ヘルシンキ大会でも銅メダルを獲得。その他に、2007年東京の丸の内で「東京ストリート陸上」をプロデュース、2011年5月に地元広島にて「ひろしまストリート陸上」に参加。続いて、7月に浅草で開催された「東京スポーツタウン」にも参加するなど、陸上競技の普及に積極的に取り組んでいる。その他、2011年3月の東日本大震災が発生した直後、自身の公式サイトを通じて「TEAM JAPAN」を立ち上げ、競技の枠を超えた多くのアスリートに参加を呼びかけるなど、幅広く活動している。さらに、8月には韓国テグで開催された「世界陸上」でTBSテレビ初の現役アスリートゲストとして現場から大会の魅力や注目選手をレポートした。

  • 清水 義次

    清水義次(しみずよしつぐ)

    都市・建築プロデューサー/株式会社アフタヌーンソサエティ代表取締役
    /3331 Arts Chiyoda 代表

    東京大学工学部都市工学科卒業後、コンサルタント会社を経て1992年、(株)アフタヌーンソサエティ設立。アフタヌーンティソサエティは、都市生活者の潜在意識の変化を掴み、新しい仕組みを創造し、それを実践するクリエイティブなシンクタンク。建築・都市・地域再生プロデュース等を行っている。近年は、セントラル・イースト東京エリアや北九州市小倉中心市街地などで、遊休不動産を活用し、都市型産業を育成して雇用創出を行い、エリア価値を向上させていく家守ビジネスモデルを構築し、まちづくり会社の自立を支援。「現代版家守のエリアファシリティマネジメント活動」は、第6回ファシリティマネジメント大賞特別賞(社会システム部門)受賞。

  • 遠藤 謙

    遠藤謙(えんどうけん)

    ソニーコンピュータサイエンス研究所研究員
    /株式会社 Xiborg 代表取締役

    2001年慶應義塾大学機械工学科卒業。2003年同大学大学院にて修士課程修了。2005年より、マサチューセッツ工科大学メディアラボバイオメカニクスグループにて博士課程の学生として、人間の身体能力の解析や下腿義足の開発に従事。2012年博士取得。一方、マサチューセッツ工科大学D-labにて講師を勤め、途上国向けの義肢装具に関する講義を担当。現在、ソニーコンピュータサイエンス研究所アソシエイトリサーチャー。ロボット技術を用いた身体能力の拡張に関する研究に携わる。また、途上国向けの義肢装具の開発、普及を目的としたD-Legの代表、途上国向けものづくりビジネスのワークショップやコンテストを主催するSee-Dの代表も務める。2014年には、競技用義足開発をはじめ、すべての人に動く喜びを与えるための事業として株式会社Xiborgを起業し、代表取締役に就任。2012年、MITが出版する科学雑誌Technology Reviewが選ぶ35才以下のイノベータ35人(TR35)に選出された。また、2014年にはダボス会議ヤンググローバルリーダーズに選出。

  • 高桑 早生

    高桑早生(たかくわさき)

    パラリンピック陸上選手

    小学6年の冬に骨肉腫を発症し、中学1年の6月に左足ヒザ下を切断した。中学時代はソフトテニス部に所属。東京成徳大深谷高校では陸上部に入り、2年時には初の国際大会、アジアパラユースに出場。100メートル、走り幅跳びで金メダルを獲得した。 2010年のアジアパラリンピックでは、100メートルで銀メダル、走り幅跳びで5位入賞した。2011年4月からは慶應義塾大学体育会競走部に所属。9月のジャパンパラリンピックでは、100メートルで初の13秒台となる13秒96をマーク。また、2014年6月8日の日本選手権では、100メートルで13秒86をマークし、日本記録に0.02秒に迫った。

  • 栗栖 良依

    栗栖良依(くりすよしえ)

    クリエイティブディレクター

    美術・演劇・イベント・製造と横断的に各業界を渡り歩いた後、イタリアのドムスアカデミーにてビジネスデザイン修士取得。その後、東京とミラノを拠点に世界各国を旅しながら、様々な業種の専門家や企業と、対話による新しい価値の創造に取り組む。2010年3月、右脚に悪性線維性組織球腫を発病し休業。2011年4月、右脚に障害を抱えつつ新たな人生をスタート。横浜ランデヴープロジェクトのディレクターに就任し、スローレーベルを立ち上げる。現在は、スローレーベルのディレクターとしてプロジェクト全般の企画開発と推進を担っている。

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